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シリーズ「ラピュールはじめて物語」第１８回

結婚式をあげ、いよいよ新しい生活が始まりました。

結婚当初、子供はまだおらず、二人でのままごとのような生活でしたが、夫婦仲が良く順調でした。
主人は、人柄が良くおっとりしていて、私を自由にさせてくれましたので、のびのびと生活していました。
二人で旅行にも良く行きました。
当時、史上最大の規模を誇った大阪の万国博が開催され、私達も出かけました。

万博では、アポロ12号が持ち帰った「月の石」を一目見ようと長蛇の列ができるなど
日本の戦後の復活のシンボルともいえる万国博でした。

その頃、静岡の駅前に西武百貨店がオープンすることになりました。
当時、西武は西武鉄道網を利用し池袋や渋谷に出した百貨店は大盛況で日本全国に支店網を拡大していた時でした。
高度成長期の波にのり日本全体が、いけいけどんどんの様相を呈していました。

そして私は、西武百貨店に入社し婦人服飾課、ハイファッションに配属されました。
ここは日本の有名なデザイナーやフランスのデザイナーの服を販売する超高級な品物ばかり、
当時の私のお給料では手の出ないようなお値段でした。
しかし、当時の静岡では手に入らないような商品を陳列したハイファッションは、新しいもの好きな
上流階級の方々の興味を引きお得意様が少しずつ増えていきました。

販売のおしごとは、お世辞にも順調とは言えませんでした。本格的な接客は、初めてでしたので
「いらっしゃいませ」という、言葉すらも恥ずかしくてなかなか言えず、いつも、小さな声でぼそぼそ挨拶していました。

最先端の職場に憧れ、自分からついた仕事でしたが、商家で育った事から、商売そのものは嫌いでした。
私の育った旅館で、経営者であった父母は、朝も夜もなく働き、家族の会話もあまりありませんでした。
だから、それに反発して、商売をしている人とではなく、普通のサラリーマンと結婚したのです。

しかし、毎日勤めていく中で、お客様が私の話を信頼してくれて、お買い物をされる姿を見て、接客がだんだん好きになりました。
お客様からケーキなどの差し入れを頂く事も沢山ありました。

また、西武百貨店は、店の作りだけでなく、経営方針も斬新で、私のような末端のスタッフにも、
やる気があれば、仕入れなどを担当させてくれる会社でした。この時、仕事のやりがいに目覚める事が出来たと思います。
そうして日々、精一杯頑張っているうちに、いつの間にか、売上げのトップである「優秀社員賞」で表彰されるようになりました。

「私でも、頑張ればやれるんだ」という思いを仕事を通じ頂いたのです。子供が出来るまでの３年弱の短い間でしたが、
ここで培われた経験や学びが後々会社を開くときの地盤になったとも言えます。

望月信子

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